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HIVやエイズなどの性感染症に関するニュース
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HIVの感染を防ぐ「PrEP(プレップ)」国内で承認見通し…同性の相手が複数いる男性「不安感じなくてよくなる」
エイズの原因となるヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染症。かつては「死の病」と言われましたが、治療薬の進歩で日常生活が送れるようになりました。感染を防ぐため、従来の治療薬(抗HIV薬)を予防的に服用する方法が今年度内にも国から承認される見通しです。
HIVは、主に性的接触や血液を介して感染します。症状がない期間を経てエイズを発症します。
エイズは体の免疫機能が破壊され、重い肺炎やがんなどを引き起こします。1987年に治療薬が誕生してから、副作用が少ない薬が続々と開発されました。治療を継続していれば、仕事や妊娠、出産など通常の生活を送れるようになり、他人に感染させることもありません。
治療薬の広がりで、国連合同エイズ計画は「2030年までの流行終息」という目標を掲げています。
これを実現するためのカギを握るのが、感染リスクが高い人を対象に、特定の抗HIV薬をあらかじめ予防投与する「 曝露前予防」(PrEPプレップ )です。
毎日1錠をのむ方法と、性行為の前後に複数回のむ方法があります。
プレップは、世界保健機関(WHO)が推奨しており、欧米では薬事承認され、無料や低額で行える仕組みが広がっています。
しかし、国内では未承認のため、薬剤を個人輸入したり、薬剤を輸入したクリニックで処方してもらったりする必要があります。費用は1か月5千~1万円程度です。
こうした中、米製薬企業「ギリアド・サイエンシズ」は2月、国からの要請に基づき、プレップで使用される抗HIV薬「ツルバダ」について、感染予防でも承認するよう公知申請をしました。公知申請は、国内の臨床試験を省略して迅速に承認申請する制度です。
予防目的のため、治療を対象とする公的医療保険は適用されません。
プレップは適切に行えば、感染リスクを99%減らせるとされています。
国立国際医療研究センター(東京)が、同性間の性的接触がある男性124人を対象に、ツルバダを1日1錠、2年間継続して予防的に服用してもらう臨床試験を行ったところ、感染者は一人も出ませんでした。薬をのんでいない177人では、11人が感染しました。
性感染症専門のパーソナルヘルスクリニック(東京)院長の塩尻大輔さんは、プレップの注意点について、「使用前にHIV感染がないことの確認や、性感染症などの定期的な検査が大切です」と説明します。
性的な接触がある同性の相手が複数いる東京都の男性(37)は、8か月前からプレップを行っています。「性的接触の度に、『感染したかも』という不安を感じなくてもよくなりました」と話します。
千葉大学感染症内科准教授の谷口俊文さんは、HIV対策の基本は、検査による早期発見、早期治療と適切なコンドームの使用だと強調します。その上で、プレップについて、「承認されれば、行政が予防法として情報提供しやすくなる利点があります。ただし、必要な人に使ってもらうには、公費助成の検討が欠かせません」と指摘しています。
2024年7月10日<読売新聞より>
梅毒 上半期の感染者数は6772人 去年に次ぎ過去2番目の多さ
ことし上半期に全国で報告された性感染症の梅毒の感染者数は6772人と、現在の方法で統計を取り始めてから、この時期として過去2番目に多くなりました。専門家は「引き続き予断を許さない状況で、予防や検査など性感染症対策への意識を高めてほしい」と、呼びかけています。
梅毒は主に性交渉で感染する細菌性の感染症で、薬で治療できますが、放置すると重大な症状を引き起こすことがあり、妊婦から胎児に母子感染する「先天梅毒」につながることもあります。
国立感染症研究所によりますと、先月30日までのことし上半期に全国から報告された梅毒の感染者数は6772人と、去年の7448人に次いでこの時期として2番目に多くなっています。
都道府県別に見ますと東京都が1723人、大阪府が889人、愛知県が386人と去年の同じ時期より10%前後減少している一方、15の県では増加していて、これまで感染者が少なかった地域でも感染が広がっている可能性が指摘されています。
梅毒の感染者はここ数年増加が続き、去年は現在の方法で統計を取り始めた1999年以降最も多い1万4906人となりました。
梅毒に詳しい帝京大学の重村克巳教授は、ことしも高いペースで増加しているとして「引き続き予断を許さない状況だ。梅毒が流行していることは多くの人に浸透してきたので、予防や検査など性感染症対策への意識を高めてほしい」と、話しています。
2024年7月10日<NHK NEWSより>
2023年のHIV報告960人 7年ぶり増、検査件数も増加
厚生労働省のエイズ動向委員会は26日、2023年に報告された国内のエイズウイルス(HIV)感染者とエイズ患者は計960人(速報値)で、7年ぶりに増加したと発表した。新型コロナの流行以降減っていた、保健所などでの検査件数が回復した影響の可能性がある。
厚労省によると、23年の新たなHIV感染者は669人(前年比37人増)、エイズ患者は291人(同39人増)で、いずれも過去20年間で2番目に少なかった。
コロナ流行中の20~22年には、流行前と比べて半減していた保健所などでのHIV抗体検査の件数は、前年の約1.5倍の10万6137件、相談件数は、約1.3倍の8万6088件に増えた。感染者や患者の報告数の増加に、影響している可能性があるとしている。
同委員会は「HIV感染リスクのある人は、早期発見のために保健所などでの無料・匿名検査や医療機関での検査を積極的に受けてほしい」と呼びかけている。
2024年3月27日<朝日新聞より>
HIVとエイズの基礎知識
Basic knowledge of HIV and AIDS
HIVとは
HIVは『Human Immunodeficiency Virus』の頭文字で、ヒト免疫不全ウイルスのことです。HIVに感染すると2〜4週間後に発熱、リンパ節の腫れ、頭痛などの風邪に似たような症状が出る場合がありますが(初期)、ほとんどの人は症状を感じることはありません。感染後2〜8週間で血液中にHIV抗体ができます。そして自覚症状のないまま数年間の潜伏期間に入ります(無症候期)。ヒト免疫不全ウイルスは、免疫の中心であるヘルパーTリンパ球(CD4細胞)という白血球に感染し、免疫力を低下させます。
エイズとは
エイズ=AIDSは『Acquired Immuno Deficiency Syndrome』の頭文字で、後天性免疫不全症候群のことです。エイズは、HIVに感染することによって発症する病気です。免疫力が低下すると、自分の身体の中で抑えることができるはずの病気を発症するようになります。それらは『日和見感染症』といって23種類の疾患があります。カンジタ症、ニューモシスティス肺炎、サイトメガロウイルス感染症、悪性リンパ腫、カポジ肉腫などの疾患があると『エイズ発症』と診断されます。
HIVに感染しても治るの?
HIVの感染症に対しての治療薬などは数年前からとても進歩して、エイズ発症を予防することができるようになりました。治療法として作用の異なる種類の抗HIV薬を服用します。しかし、まだ完全にHIVウイルスを身体から取り除く治療法はありません。それでも、エイズを発症しても治療で免疫力を高めることにより、感染前と変わらない生活を送ることができます。HIVの感染が検査などで判明したらすぐに医療機関を受診して、適切な治療を受けることが重要です。
HIV感染経路
HIVの感染は主に3つの経路が考えられます。
【性行為による感染】 HIVウイルスは主に血液や精液、膣分泌液などに多く含まれていて、性行為中に性器や肛門、口腔などの粘膜や傷口から感染します。
【血液を介しての感染】 HIVウイルスが存在する血液を輸血したり、違法薬物(覚せい剤など)の注射器回し打ちなどが原因で感染します。日本国内での献血による血液は厳重な検査により最高水準の安全が確保されていて、感染の可能性はとても低くなっています。
【母子感染】 母親がHIVに感染していると妊娠中や、出産時、授乳時に赤ちゃんへ感染することもあります。母親が抗HIV薬の服用、帝王切開での分娩、母乳を与えないことなどで赤ちゃんへの感染を1%以下に抑えることができます。
上記の感染経路以外では感染の恐れがないことが分かっていますので、HIV感染を防ぐには性行為を行う時は必ずコンドームを使用して、パートナーとの理解を共有することが重要です。
日本のHIVの現状
2022年に報告されたHIV感染者は 632件、AIDS患者は 252件で、HIV感染者とAIDS患者を合わせた新規報告数は 884件でした。累積報告数は 2022年末の時点では、HIV感染者 23,863 件、AIDS患者 10,558件で 計34,421件となりました。
世界の現状
UNAIDS(国連合同エイズ計画)とWHO(世界保健機関)は、2022年末現在、世界のHIV陽性患者数は3900万人、新規HIV感染者数は年間130万人、年間63万人がエイズによって命を落としたと報告しました。
HIVの検査
HIV Testing
どうして検査を受けた方がいいの?
HIVに感染しても自分自身に感じるような症状はほとんど現れません。検査を受ける以外に自分の感染状態を知る方法はありません。検査で感染していないことが判明すれば、よけいな心配や不安を解消することができます。そして、感染がわかった場合は適切な医療機関へ引き継がれ、HIVウイルスを抑える治療を受けることで今までと変わらない生活をおくることができます。少しでも早く感染を知ることは、身体のダメージを抑えることにもなります。
検査はいつでも受けられる?
HIVの感染初期は、血液中のHIV抗体が検出されにくい時期です。検査で正しい結果を得るために『あのSEXの時に…』と思える機会から2ヶ月以上経ってから検査を受けるようにしましょう。2ヶ月以内であっても、心配や不安を抱えている場合は保健所や、無料で検査や相談が受けられる「サークルさっぽろ」という施設があります。
献血のついでに調べてもらえるの?
HIV感染は、献血では分かりません。検査を目的とした献血行為は、やめましょう。
検査結果はすぐ教えてもらえるの?
保健所などの検査施設には、通常検査と即日検査があります。通常検査は、検査結果がわかるまで 1週間ほどかかります。即日検査は、その日にわかります。しかし“偽陽性”という判断になった場合は確認検査が必要になります。施設のスタッフの方と相談の上、医療機関で再検査を受けてください。
誰かに相談したいこと
Consultation
HIVにかかりやすい人っているの?
かかりやすい人、かかりにくい人などはいません。HIVなどの感染症にかかりやすい行為などがあるということです。HIVなどの感染経路は、日本では性行為がもっとも多いです。誰にでも可能性があるのです。感染を予防するために、そして感染した時にもHIVと共に生きていくための正しい知識、理解を持つことが大切です。
検査を受けて「陰性」だった
検査を受けた時点では、HIV抗体ウイルスが検出されませんでした。感染の可能性がある性行為を行った時から2ヶ月以上経過していて「陰性」という結果が出た場合は、HIVの感染はないと考えられます。ただし、感染予防に注意した行動をとらなければ、今後は感染の可能性もあります。セックスを行うパートナーとしっかり話し合い、コンドームを使用するなどの予防を実行しましょう。
検査を受けて「陽性」だった
HIVに感染している可能性があるので、医療機関で精密検査を受けて必要な治療を受けてください。検査機関で「陽性」と判定されると、心構えができている人でも大きなショックを受けることがあります。その時は、検査機関で受け取った資料などにゆっくり目を通し、気持ちが落ち着いてから医療機関に行くことも一つの考えです。検査時に相談を受けられる「サークルさっぽろ」のような施設で、話を聞いてもらうことも可能です(要予約)。心配事を相談できるサポート団体もあります。陽性者という同じ立場の人が相談にのってくれる団体もあります。ひとりで悩まず、ゆっくりと検査結果を受け止めてください。
陽性者への福祉サービス
HIV感染症の治療は、健康保険を利用しても月々の自己負担が6万円前後かかり、治療は一生続きます。日本では患者さんが治療を継続していく上で経済的負担を少しでも軽くするために利用できる社会制度があります。この制度について知りたいことや相談事などは医療ソーシャルワーカーにお問合せください。NGOや保健所でも相談を受け付けています。